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原題 IT BEGINS WITH YOU
著者 Jillian Turecki
ページ数 256
分野 自己啓発
出版社 HarperOne
出版日 2025/01/14
ISBN 978-0063374362
本文 幸せな人間関係を築くためにいちばん重要なのは、自分自身との関係である。自分の認知、言動に革命を起こせば、恋人との関係も大きく変化する。変化の鍵を握っているのは自分自身で、すべての変化はそこから始まる。

私たちは恋愛関係において、運命の人と出会ったら、その人が自分を幸せにしてくれ、あとはすべてうまくいくと考えがちだが、それは間違いだ。恋人といると「もっと」幸せになるかもしれないが、自分を「幸せ」にできるのは、究極的には自分しかいない。パートナーがいないと幸せになれない、あるいは自分は愛されるに値しないと強固に信じ込んでいることが、恋人や夫とのゆがんだ関係の原因となっていて、まずは、そこを変えていかなければならない。

また、パートナーとの関係は長い時間をかけて築き上げるものであり、築くためには自分の態度に責任を持つ覚悟が必要だ。自分の理想を相手に押しつけ、思い通りに相手が行動・発言しないからといって非難するのではなく、自分がどんな人間で、どんな価値観、弱さ、課題を持ち、何を望むかを正直に伝える勇気も必要である。そして、価値観が合わないとわかった場合には、恋愛初期の化学反応のようなときめきや、相手の魅力に未練があっても、別れを選ぶ賢明さを持ち合わせていなければならない。

著者の父(Stanley Turecki)は著名な児童精神科医で、大変気難しく躁鬱病の兆候も見られた。両親の仲も険悪で、頻繁な衝突の末に結局離婚に至った。著者が11歳の頃、父親は『The Difficult Child』(1985年、未邦訳)という本を発表したが、その「難しい子ども」とは著者のことだと知り、著者は深く傷つき、その後、父親の評価は間違っていたと、長い時間をかけて証明しければならなかった。父親とのゆがんだ親子関係によって形成された、「自分は不十分だ」「愛されるためには自分の欲求は抑えねばならない」という強固な思い込みは、著者の夫や恋人との関係にも投影されることもあった。だが、著者は、そこに自身の課題を見いだし、乗り越えたことで、より調和のとれた人格が築き上げることができた。このように、自分自身の弱さを見つめ受容しながらも、よりよい自分になる決意と、そのための困難な道を進む覚悟も、自分が本当に求める人生を歩むためには不可欠なのだ。

自分という人間を深く理解し、受容し、成長させていくことこそが、恋人との深い繋がりや安らぎのある関係の基盤となる。本書では、そのための9つのステップが、著者のコーチングをした実際のケースを引き合いに出しながら、落ち着いた、親しみやすくも率直な口調で語られる。読者は、自身の悩みを著者のクライアントのそれに重ねることができる。具体的な指示や書き込み型の質問も用意されているので、読者は、それらを通じてよりよい自己理解と、パートナーとの関係改善のためのヒントを得るだろう。