原題 | Unmasking CJ (CJ's Sichimi) |
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著者 | 김승재(キム・スンジェ) |
ページ数 | 121 |
分野 | 時事/社会問題 |
出版社 | 유페이퍼 |
出版日 | 2023/11/11 |
ISBN | 979-1193577363 |
本文 | 朝鮮半島では、百済の時代から狩りに鷹を使用しており、タイトルに使われている「시치미」とは、高麗時代より使われ始めた鷹の持ち主を示す名札のことだ。現代では、この「시치미」は「しらばっくれる」の意味でも用いられる。狩りが盛んな時代になって、他人の鷹を自分の物にしようと名札を付け替える「偽装」が横行したからだ。まえがきで著者は、韓国の有名企業であるCJグループの行為が、まさに「시치미」だと言っている。CJグループがホームショッピングチャンネルで販売した服の一部が、中国製と表示されながら、実は平壌の工場で作られていたからだ。このような偽装は決して珍しくないが、この事件が特に問題視される理由の一つが、国連安保理による北朝鮮への制裁下で起きていたことにある。 著者は2018年12月に事件についての情報提供を受け、すぐに取材を行った。しかし偽装が事実だと確認が取れても、それを記事にして報道することは容易ではなかった。悩んだ末、著者は書籍を出版して事件について世に知らせることにしたという。それが、2020年6月に出版された『世界の縫製工場、北朝鮮』だ。出版後、事件はテレビのドキュメンタリー番組で取り上げられ、続いて関税庁が調査に着手し、国会の国政監査でも議題に上がった。その後、検察による捜査が始まり関係者のほとんどが起訴され、2023年7月には全員が有罪判決を受けた。事件が区切りを迎えたことから、著者は改めて初取材から裁判で有罪判決が出るまでの約4年間に確認した事実をまとめ、今回、電子書籍の形で出版した。 本書は、事件の一部始終を写真や書類といった証拠とともに提示している。そのため、読者は北朝鮮製の衣類がどのようにして中国製に変身し、韓国内で販売されたのか、そして大企業が危機を免れるために、どのような巧妙なウソをついたか、を詳細に知ることができる。著者は「事実は魔力を持っている。隠そうとすればするほど、その力は大きくなる」と語り、取材を継続できた原動力も、隠された事実に向かう好奇心だったという。事実を淡々と記録した、読み応えのあるノンフィクションである。 |