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原題 Five Evil Women
著者 Joanna Bourke (Author)
ページ数 344
分野 心理学、社会学
出版社 Reaktion Books
出版日 2026/03/01
ISBN 978-1836391746
本文 本書は、単なる凶悪殺人犯のプロファイリングにとどまらず、社会やメディアがいかにして女性犯罪者を「怪物」や「絶対悪」として象徴化し、執拗に排除してきたのか――その構造を、歴史的・倫理的視点から解き明かしている。

本書では、以下の5人の女性殺人犯に焦点を当てる。
マイラ・ヒンドリー(英):パートナーと一緒に、少年少女5名を殺害した 「ムーアズ殺人事件」の犯人。
ローズマリー・ウェスト(英): 夫と共に10人の殺害に関与し、現在も服役中。
アイリーン・ウォーノス(米): 映画『モンスター』のモデルとなった、数少ない女性の連続殺人犯。
カーラ・ホモルカ(加): 自身の妹を含む3名の少女の殺害に関与。
カーラ・フェイ・タッカー(米): 1998年、テキサス州で女性として約1世紀ぶりに死刑が執行された、ピッケルによる二重殺人の犯人。

彼女たちの多くは誘拐、性的暴行、拷問、殺害といった凄惨な罪を犯した。その経緯や状況に共通点があるだけでなく、彼女たちを強く結びつけているのは、「女性である」という理由で、マスコミや世論から苛烈な嫌悪を向けられた点である。男性の共犯者がいる場合でも彼ら以上に、彼女たちは「悪の象徴」――すなわち人間ならざる存在、不気味な異分子、怪物として扱われてきた。

刑務所内で従順に過ごし、敬虔なキリスト教徒として改悛の情を見せた者や、通信教育を修了した者もいる。しかし、社会のセンセーショナリズムは収まることなく、異常なまでの拒絶反応が消えることはなかった。これが司法制度における不当な扱いを招き、また、世論の圧力で仮釈放が恩赦や仮釈放が不可能になったケースもある。

社会はなぜ、これほどまでの過剰反応を示したのか。当時の宗教観や歴史、社会構造をたどりながら、現代における「悪」の輪郭そのものを本書は問い直していく。
著者は、単なる収監だけではこうした暴力行為の抑止にはならないと主張する。重要なのは、犯罪に至った背景や環境への理解、そして罪を犯した後の人間に対する「共感」であると説く。それは決して容易なことではない。しかし、その困難な理解のプロセスこそが、真の社会正義に貢献する唯一の術なのである。