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原題 Mao
著者 Kerry Brown
ページ数 272
分野 人文科学、政治、歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2026/05/01
ISBN 978-1836391913
本文 現代中国の建国の父「毛沢東」とは一体何者であったのか。草創期の中国共産党から中華人民共和国の建国、文化大革命、そして現代中国や周辺諸国への影響に至るまで、あくまでも毛沢東を軸に構成されているのが本書の特徴だ。

清王朝末期の1893年生まれの毛沢東は、激動する祖国で多感な時期を過ごすなか、北京で共産主義思想に触れる。
草創期の中国共産党を支えた毛沢東に対し、国民党の蒋介石は中国共産党を不俱戴天の仇とみなし、弾圧をくり返した。毛沢東は、瀕死の中国共産党を立て直すため、ソ連のような都市部のプロレタリアをターゲットにするのではなく、人口の多数を占める農民を共産化する中国独自の共産主義を打ち出した。蒋介石による白色テロのゲリラ戦で耐え抜き、ゲリラの司令官として名を上げ、やがて組織の最高幹部に上り詰めた。

その後、毛沢東は、日中戦争や戦後の国共内戦を勝ち抜き、1949年10月1日に中華人民共和国を建国する偉業を成し遂げた。しかし、独自に編み出した「毛沢東思想」※1に傾倒し、自身が夢想するユートピアを実現するため、愛する人民を革命の荒波に投げ込んでいく。
計画経済により資本主義を閉め出し、自身に批判的な文化人を弾圧した。その結果、全国各地で百万人単位の餓死者が出る一方で、政策の弊害を忠告する幹部を粛清するなど、建国の英雄は冷酷な独裁者に変貌していった。

やがて、毛沢東は、ついに「現人神」のように崇拝される存在となり、文化大革命の混乱を引き起こす。1976年、戦禍以上の犠牲者を出しながら、カリスマの死とともに混乱はようやく収束した。

後継者の鄧小平は国土の回復に向け「改革開放」路線へと大きく舵を切ったが、「毛沢東思想」にもとづく中国共産党の一党独裁は国是として維持され続けた。その結果、「天安門事件」のような容赦ない弾圧がくり返され、“アジアのレーニン”と呼ばれた毛沢東の影響力は現代にまでおよんでいる。

従来よく引用されてきた中国側の資料は、当時の失政や文化大革命での混乱にほとんど触れていないが、著者はその点を忌憚なく指摘している。
書籍の後半では、建国後の内政でどのような混乱が起きたのか、また毛沢東が編み出した中国独自の共産主義や「毛沢東思想」がどのように現代中国の基本政策として受け継がれているかが、克明に描かれている。
本書は、単に毛沢東の一生を述べた伝記ではない。賛否両論が喧しい建国の巨人を、多様な資料をもとに客観的な視点から描き出し、当時の状況を浮き彫りにする一冊だ。